歯科医院に欠かせない存在である歯科助手ですが、業界では人が定着しづらい職種ともいわれています。実際に求人を出してもすぐに辞めてしまう、スタッフの入れ替わりが激しいといった悩みを抱えている医院も少なくありません。そこで、今回は歯科助手が辞める理由や辞めやすい医院の特徴、退職を防ぐための有効な対策について紹介します。
歯科助手が退職する理由
歯科助手は専門資格が不要でありながら、歯科医師や歯科衛生士をサポートする職種です。歯科医院には大切な存在ですが、定着率の低さが課題となっており、求人を出してもなかなか長続きしないといった声が多くあります。では、なぜ歯科助手は辞めてしまうのでしょうか。
まず大きな理由のひとつに「人間関係のストレス」が挙げられます。歯科医院は少人数で運営されるケースが多いため、人間関係が業務のしやすさに直結します。
とくに院長や先輩スタッフとの関係性がうまくいかない場合、精神的に追い詰められやすく、早期離職につながってしまうでしょう。
次に「業務内容と待遇のギャップ」も退職理由としてよく挙げられます。歯科助手の仕事は患者対応、診療補助、器具の洗浄、在庫管理など多岐にわたるため、思った以上に体力的・精神的な負担がかかります。
しかしながら、その業務量に対して給与や待遇が見合っていないと感じる人も少なくありません。とくに未経験者の場合、入職前に仕事内容を十分に把握できておらず「思っていた仕事と違った」と感じてしまうこともあります。
さらに「休日の少なさ」も理由のひとつです。休診日が限られている歯科医院では、スタッフの休日が週1日と祝日のみというケースも少なくありません。
とくに人手不足の職場では、それ以上の休みを取るのが難しく、十分にリフレッシュできないまま勤務が続いてしまうこともあるでしょう。近年は患者の利便性を考えて夜間診療をおこなう医院も増えており、その分、労働時間が長くなりやすい傾向にあります。
結果として、仕事の疲れが蓄積しやすく、せっかくの休日も休息だけで終わってしまうことから、心身の負担が重なり、退職を考えるきっかけとなる場合もあるでしょう。
歯科助手が辞めやすい医院の特徴
歯科助手の離職率が高い医院には、いくつか共通する特徴があります。まず、前述の通り「人間関係に問題がある医院」は、定着率が著しく低下する傾向にあります。スタッフ間に明確な上下関係や派閥がある、コミュニケーションが希薄、指導が高圧的といった場合、職場に居づらさを感じて、退職を選択してしまうでしょう。
また「評価制度やキャリアパスが不透明な医院」も定着率に悪影響を及ぼします。どれだけ頑張っても給与が上がらない、やりがいが見出せないといった状況では、長期的に働く動機づけが難しくなります。
また、歯科医院側がスタッフの成長をサポートする体制を整えていない場合、歯科助手自身が自発的に努力し続けなければなりません。こうした状況のなかで、自分のキャリアパスが不透明なことに不安を感じ、退職を選択してしまうケースもあるでしょう。
そして「スタッフが十分に確保されていない」ことも辞めやすい特徴のひとつです。歯科助手が退職を考える背景には、仕事の忙しさや休みの少なさ、十分に休憩が取れないといった問題があります。
これらの要因の根本にあるのが、歯科業界における慢性的な人手不足です。多くの歯科医院では常に歯科助手や歯科衛生士の募集がおこなわれており、スタッフが十分に確保できていない状態が続いています。
その結果、一人ひとりにかかる業務負担が大きくなりやすく、対応する仕事量に見合った報酬が得られないと不満を感じるケースも少なくありません。
歯科助手の退職を減らす有効な対策
歯科助手の定着率を向上させるために、まずは「定期的なフォローアップ」が非常に重要です。歯科医院内でコミュニケーションが十分に取れていないと、歯科医師は歯科助手が感じている不満に気づけず、逆に歯科助手も歯科医師の期待や求める働き方を理解しにくくなります。こうしたすれ違いを防ぐためには、定期的に面談の場を設けることが重要です。お互いの意見や悩みを共有することで、歯科医師は職場環境の改善に取り組みやすくなり、歯科助手に対しても具体的な指示やフィードバックを与えられます。
継続的な対話を重ねることで、信頼関係が築かれ、不満やストレスの解消にもつながっていくでしょう。
次に「職場の人間関係の改善」にも取り組む必要があります。定期的なミーティングを設けてスタッフ同士が意見を交わせる場をつくったり、誕生日や記念日をお祝いするなど、ちょっとしたコミュニケーションの工夫が職場の雰囲気を柔らかくします。
院長や管理職も積極的にスタッフと対話し、悩みを共有できるような雰囲気づくりが、働きやすい職場につながるでしょう。
そして「評価制度やキャリアパスの整備」も、スタッフの定着には欠かせません。定期的な評価をおこない、その結果に応じた昇給や賞与を設けることで、努力が正当に報われる環境を整えられます。
また、資格取得支援や外部セミナーへの参加など、スキルアップの機会を提供することで、将来のキャリアに希望をもてるようになります。
